パリ(Paris) part3 7区 エッフェル塔 第1部 『妖艶な2重スパイ』

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パリの一大観光名所『エッフェル塔』。ここを目当てにパリを訪れる人も少なくない程有名な場所ですが、この塔は歴史に翻弄された女性に纏わるある悲しい物語を秘めています。

今回は2部構成。先ずは定説の第1部をお届けします。

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1876年8月7日オランダ北部の都市『レーワルデン』の裕福な帽子屋で1人の女の子が生まれました。
その女の子の名はマルガレータ・ゲルトルード・ツェレ(以下マルガレータ)。

マルガレータは父親に溺愛され、上流家庭の子女が通う名門校に通っていましたが、彼女が10代になった頃から父親が見栄っ張りの浪費家であった事が原因で商売が行き詰まりをみせます。

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そしてマルガレータが思春期になった頃には、一家は店も家も売り払う程困窮していました。
両親は別居し、母親はその心労から他界してしまいます。

その為マルガレータは職業婦人になる事を目指し専門学校へ進学します。
しかし、授業が性に合わず叔父を頼ってマルガレータは大都市『ハーグ』へ出ました。

マルガレータはここである新聞広告と出会い、彼女は藁をも縋る想いで応募します。

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その新聞広告には

「当方、東インド諸島帰りの陸軍大尉。良家の令嬢との交際を求む。結婚の意思有り」

とありました。

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この大尉の名はルドルフ・マック・レオド。オランダ植民地軍の優秀な将校でした。

ルドルフは良家の出身でしたが、39歳で独身という事でそれを心配した彼の友人が独断で新聞掲載したのでした。
大尉は写真入の何通もの届いた手紙の中から当時19歳という若くて美しいマルガレータを選び、1895年2人は結婚します。

そして、結婚から2年後の1897年にはノーマンという男の子を、その翌年には女の子を授かっています。

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しかし不幸は2人を襲います。
なんと息子のノーマンが何者かに毒殺されたのです。

この事件は未解決のまま終わり、これを期に元々経済力と美貌だけを求めていた2人の関係は崩れてしまいます。

やがて1902年26歳の時にマルガレータは「未だ若い内に人生をやり直そう」と決心します。
離婚し娘を置いたまま家を出て、彼女はパリへ旅立ちました。

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パリについたマルガレータは始めは絵画モデル等をして生計を立てていましたが、やがてモリエールという乗馬学校と曲馬団経営者をしていた男を頼る事になります。

そして1905年、モリエールはマルガレータの東洋的な美貌と経歴に目を付け、彼女をマタ・ハリ(以下マタ・ハリ)という芸名で『東洋の踊り子』として売り出すことを考えました。

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【補足】
マタ・ハリはルドルフと結婚していた時に、一時当時オランダ領のジャワ島にいた事があり、そこでヒンドゥーダンスを見ていました。
モリエールはこの点も利用したのです。
この時マタ・ハリ自身は周囲に、「自分はインド生まれでヒンドゥーの血が流れている」と公言していたと云われています。

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舞台の上でマタ・ハリはその豊満な体でエロチックに踊りながら身に付けているベールを1枚ずつ脱いでいく。

この仕草に観客は息を呑みました。

エキゾチックで艶かしいマタ・ハリの肢体と踊りは大当たりし、パリのオランピア劇場を始めとしてミラノのスカラ座やスペイン、そしてドイツのベルリンモナコでも喝采を浴びます。
彼女のギャラは跳ね上がり、高級将校や商人そして政治家等のパトロンも付きましたが、マタ・ハリは父親と同様に浪費癖があり、お金にはいつも不自由していました。

【補足】
踊り子として最初はレディ・マック・レオドと名乗っていましたが、パリ中の評判になった頃にマタ・ハリと名を変えています。
またマタ・ハリとはヒンドゥー語で『暁の目』を意味します。

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そして運命はまたマタ・ハリを襲います。今度は第一次世界大戦が勃発したのです。
マタ・ハリが主に活躍していたフランスはドイツの敵国となっていた為、彼女は嫌疑を免れようとオランダに戻らざるを得ませんでした。

一時はアムステルダムの銀行家のパトロンがいましたが、これは長くは続かず、また仕事も殆どない状態でした。
そんな彼女にドイツの情報部がスパイとして目を付けます。

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1916年マタ・ハリは当時既に40歳になっていましたが、未だ女の色香が漂いフランス貴族や軍人との肉体関係を含めた人脈がドイツ軍の興味を引いたのでした。

その後アムステルダムでドイツ領事をしているクローマーに「ドイツ軍のスパイにならないか」と持ちかけられます。
生活に苦慮していたマタ・ハリにとっては渡りに船の申し出で、これに快諾し彼女は『H21』という登録番号を与えられました。

そしてマタ・ハリはスパイの小道具である秘密インクを手渡され、また前金として2万フランを手にしました。

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【補足】
2万フランという金額は当時でいうと5つ星ホテルのスイートルームを2年間貸しきる事のできる程の大金でした。

これが女スパイ『マタ・ハリ』の誕生となります。

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彼女は密命を受けフランスの温泉療養地であるヴィッテルへ向かい、ここでマタ・ハリは嘗ての恋人であった入院中のフランス軍ヴァディム・マスロフ大尉を毎日看病することになります。

そして看病と同時に他のフランス軍将校らとも情報交換し、そこで得た情報をドイツへ流していました。

しかし美しく有名人であったマタ・ハリは大変目立ち、イギリスを皮切りにフランス、オランダからも怪しまれる存在になっていきます。

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そしてパリに戻った際にマタ・ハリはフランス諜報部から詰問を受ける事になります。
この時マタ・ハリをドイツのスパイだと調べていた諜報部のラドゥー大尉は、同1916年に今度は「フランス軍の為に働かないか」と持ちかけました。

浪費と人気凋落でこの時金銭的にも追い詰められていたマタ・ハリは「ドイツの皇太子を誘惑する」とまで言って、この時フランス軍のスパイになる事を引き受けたと云われています。

『マタ・ハリ』が2重スパイとなった瞬間でした。

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先ずスペインのマドリッドへ渡ったマタ・ハリは常に複数の目から付け狙われてはいましたが、夜毎パーティーへ出席し、ドイツ大使館のアーノルド・カレ少佐を始めとして体を武器に情報を引き出し、そこで得た情報をあちこちの国へ流しました。

「情報を止めるとどこかの国が自分の命を狙う」

マタ・ハリはそう自分で考え、欧州各地に赴き自らを追い込んでいくことになります。

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この時期フランス軍は『H21号』という敵国ドイツに情報を流しているとみられるスパイに警戒して狙いを定めていました。

そして終に1917年2月、フランス軍はエッフェル塔で傍受した暗号からこのスパイ『H21号』の人物をつきとめ、パリのホテルで逮捕する事に成功します。

この『H21号』こそフランス軍のスパイの筈であったマタ・ハリだったのです。

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マタ・ハリはこの時

「フランスには地位の高い友人が何人もいます。彼らが私の無実を証明してくれます。」

と自身満々に言い放ちました。

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しかしその思惑はまんまと外れます。
友人らは誰一人としてマタ・ハリに手を差し伸べなかったのです。
そしてマタ・ハリはフランスの軍法会議にかけられる事になります。

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彼女は持てる演技力を全て振り絞って次の様に尋問に答えています。

「確かに私は多くの将校と付き合いました。しかしそれは諜報活動の為ではありません。彼らと恋をしたのです。私は軍服に弱く、元夫(ルドルフ)も軍人でした。」

「将校らがくれたお金は、世間の常識からいうとプレゼントとしては多すぎる額かもしれません。しかし、私は踊り子『マタ・ハリ』です。彼らは私の心と体をどうしても手に入れたがったのです。」

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この時のマタ・ハリの弁護士も過去の恋人でした。
彼は必死にマタ・ハリを弁護しましたが、力及ばず銃殺刑という判決が確定してしまいます。

刑は逮捕から8ヶ月後の1917年10月15日にパリ郊外のヴァンセンヌの古城で執行されました。
歴史に翻弄された妖艶な2重スパイ『マタ・ハリ』には、12発もの弾丸が撃ち込まれ彼女は壮絶な最後を遂げ、歴史の舞台から姿を消したのでした。

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【補足】
この哀れな末路が悲劇性を駆り立て、大女優『グレタ・ガルボ』も演じる等現在でもマタ・ハリは多くの映画やドラマの題材になり続けています。

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エッフェル塔(La tour Eiffel)

住所:5 avenue Anatole France,Champ de Mars,75007 Paris
電話:33 01 44 11 23 23
交通:パリ近距離地下鉄6号線『Bir Hakeim駅』下車
パリ郊外地下鉄(RER)C線 『Champs de Mars - Tour Eiffel駅』下車
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【参考文献】
『[伝説]になった女たち』山崎洋子(株式会社光文社)
『歴史人物から読み解く世界史の謎』歴史のふしぎを探る会(株式会社扶桑社)
『世界史の謎と暗号』歴史の謎研究会(株式会社青春出版社)

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第2部へ続く

パリ(Paris) part4 7区 エッフェル塔 第2部 『創られた虚像』

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この記事へのコメント

beetle
2011年06月02日 07:49
マタハリとはゆうじさんとしては珍しいテーマですね?
2重スパイ、妖艶(艶っぽい)いずれも私の好みの題材であり気持ち良く読めました。
やはり人間を変えるのは金であることが良く解りました、また人間の弱さも見せつけられました!

エッフェル塔の真下からの写真は始めて見ました、いつもありがとうございます!
2011年06月02日 08:06
 読ませていただきました。「マタハリ」という女スパイの名前は聞いたことがありましたが、壮絶な人生であったことを初めて知ることができました。

 ゆうじさんありがとうございました。
2011年06月02日 16:47
こんにちは。
マタハリ。壮絶な人生を送ったのですね。
勉強になりました。
エッフェル塔一度は行ってみたいものです。
2011年06月02日 19:00
私も「マタ・ハリ」が女スパイであったことは知っていましたが、こんな凄い人生を送ったことは初めて知りました。

これで話が終わったのかと思いきや、今回は「二部構成」とあります。「マタ・ハリ」の裏の話が続くのか、エッフェル塔を舞台に別の悲しい女性の物語が続くのか、次回が楽しみです。
2011年06月03日 19:41
スパイの代名詞とまで言われたマタハリ。
美貌の故に、数奇な運命を辿らざるを得なかったのでしょうね。

二部構成の次回も、楽しみにしたいと思います。
2011年06月04日 15:22
興味深く読ませて頂きました。
前記事でのご質問ですが、資料館はサンディエゴにあります。
ターコ
2011年06月06日 00:14
マタハリという名前はよく聞きましたが、そんな話だったのですね~。何とも言えませんが、そんな生き方で彼女は満足だったのでしょうか。
パリは3度行っていますが、何度行っても華やかで素敵ですね。フランスは原発が多いと聞いてからは、少し関心も今までとは違ってきましたけれど(^_^;)
よんちゃま!
2011年06月06日 13:50
美しすぎるのは「罪」・・・なのでしょうか?
2011年06月07日 01:22
beetleさん
いつもありがとうございます。

綺麗毎言っても結局は世の中金というのは実際のところそうでしょうね。
私も良く感じます。

エッフェル塔の下からのアングルを撮られる方は実際現地でも私くらいでした。

私からすると何故ベタな構図しか撮らないかかなり疑問ですけどね。。。
2011年06月07日 02:13
けんちゃんさん
コメントありがとうございます。

また良ければ遊びに来て下さいね。
2011年06月07日 02:15
さあやさん
コメントありがとうございます。

Blog読んで頂きまして嬉しいです。
良かったらまた遊びに来て下さいね。
2011年06月07日 02:20
しばやんさん
いつも訪問ありがとうございます。

しばやんさんも未だ知らないことあるのですね。
他の人は中々紹介できない話もあると思いますのでこれからも色々なネタを情報発信できるよう努めますね。
2011年06月07日 02:21
S子さん
いつもコメントありがとうございます。

次回予定の第2部も良かったら読んで下さいね。
2011年06月07日 02:29
DONさん
いつもコメントありがとうございます。

できれば記事にあまり関係の無い内容は個別にメッセージで頂きたいのですが、無理なお願いでしょうか。
2011年06月07日 02:32
ターコさん
こんにちは。

満足も何も彼女は踊り子になるのもスパイになるのもそれしか選択しがなかったのだから現状を生きることで精一杯で人生を考える暇などなかった筈ですよ。

最後は訳も分からないまま銃殺されているのですから。。。
2011年06月07日 02:34
よんちゃま!
いつもコメントありがとうございます。

罪です。
そしてその美しさを還元しない事があればそれも罪です。

そう思いたいです。
BOSS・ゆうたろう
2011年06月08日 03:11
マタ・ハリ。
彼女が息づいていた街、
一つの歴史を脳裏に携え、
一度は行ってみたい。。。
2部、楽しみにしています。
2011年06月08日 09:48
※個別メッセージを送信したところ、受信制限をされているようですのでこちらにお送りします。

上記の返信コメント、拝見しました。記事と関係ないコメントに関して、お気に障ったようで大変失礼いたしました。私の上記コメントはこちらと併せて削除してくださって構いません。
ターコ
2011年06月09日 21:44
流れで踊り子やスパイになっているようですが、どの転機にしろ、当然彼女自身が選択して進んでますよね。
娘を置いて出ないという選択、踊り子にならないという選択、エロダンスを踊らないという選択、浪費癖を直すという選択、は しなかった。様々な場面で彼女は選択をして銃殺されるに至った。その道しかなかったとは思えません。
その一つ一つの選択を後悔したかどうかに興味がありますが、後悔してたのなら、少しは彼女を理解出来るかもしれませんね。
qoo
2011年06月12日 00:33
いつも気持ち玉ありがとう。あまり歴史関係は詳しくないけど、なんだか凄いものを感じました。国内はもちろん、海外もすごく行かれるのですね
2011年06月25日 10:36
ゆうたろうさん
コメントありがとうございます。

街は考えながら歩くと別の顔を必ず見せてくれます。何故旅をするか?それはそこに街があるから・・・
2011年06月25日 10:37
DONさん
態々ありがとうございます。

気にされずこれからも訪問とコメントお待ちしておりますよ。
2011年06月25日 10:39
ターコさん
いつもありがとうございます。

おっしゃる通りだと思いますが、時代背景などを考えると一概には現代の感覚では解決できないこともまた事実です。

それにマタ・ハリの事実は別のところにあると思いますから・・・第2部をご覧下さい。
http://yuji7e.at.webry.info/201106/article_2.html
2011年06月25日 10:41
qooさん
お久しぶりです。

歴史を少しでも感じて頂いて嬉しいです。
これからも国内外問わず色々と紹介していきますね。

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