東京都新宿区 part9 高田馬場 『意外な決定要因』

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東京都新宿区の『高田馬場』といえば有名な早稲田大学があって今ではすっかり学生の町といったイメージが強いですが、かつて近くにはその名の通り馬場がありました。しかしその馬場の位置は今の高田馬場駅から1kmと離れており、地名とするには若干違和感を感じます。今回はこの地名採用の経緯と知られざる決定要因を紹介します。

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新編武蔵風土記稿』によると、この場所が先ず『高田』と呼ばれるようになったのは、江戸時代初期に徳川家康の六男にあたる越後高田藩主『松平忠輝』の母『高田殿(茶阿局)』の庭園が造られたことに由来しています。

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【補足】
因みに『高田馬場』は、平安時代末期に源頼朝平家追討の挙兵をした際に馬揃えをした場所というやはり馬に関連した縁を持っています。

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寛永13(1636)年、将軍徳川家光がこの高田村に旗本らが乗馬や流鏑馬の練習をする場所として馬場を完成させました。

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江戸名所図会』では「竪は東西へ六町に、横の幅は南北へ三十余間」と記されています。

これは今の表記で表すと縦約650m、横約60mと細長い土地でありました。

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【補足】
馬場は他にも今の永田町西五軒町小石川銀座にもありましたが、地名として残ったのはこの『高田馬場』のみです。

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そしてこの土地は8代将軍徳川吉宗が息子の9代将軍徳川家重の疱瘡平癒を祈願して穴八幡宮に奉納するときなど、度々流鏑馬や記念行事の場として使われていました。

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【補足】
高田馬場跡の近くに現在も穴八幡宮があります。

この穴八幡宮の歴史は古く、社伝によれば康平5(1062)年に源義家奥州からの帰途にこの場所へ兜と太刀を奉納し八幡神を祭ったことに始まると伝わります。

因みに元は穴八幡宮ではなく高田八幡宮と称していました。そして寛永18(1641)年、弓矢の守護神である京都の岩清水八幡宮を勧請します。

同寛永18年、別当寺の放生寺を建立するために山を切り崩すとそこの横穴が見つかり、なんと中から金銅の阿弥陀如来像が出現したのです。

それ故、この八幡宮は穴八幡宮と呼ばれるようになったと云われています。

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ここまでのくだりでまだ地名は『高田馬場』となっていません。

所謂『高田馬場』という正式な地名になったのは意外にも最近なのです。

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時代は下って明治43(1910)年、明治の文明開化鉄道敷設工事が始まり、この場所にも駅が造られました。

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地元住民はこのとき駅の命名に関して土地に関係の深い『上戸塚』或いは『諏訪森』を希望します。
しかし、国鉄の前身である鉄道院があることを強行に主張をして住民の意思は却下されました。

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それはなんと近くにあった『高田馬場』が赤穂四十七士で有名な『堀部安兵衛』の仇討ち現場であったことでした。

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「『高田馬場』と結びついた『堀部安兵衛』の忠義報恩を示した仇討ちという行動が、明治時代の忠君愛国の精神に相応しい」という理由でぜひ多くの人々が利用する駅名したいと考えたのです。

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かくして駅名は忠考思想を世の中に広く知らしめるために、『高田馬場駅』と明治という時代ならではの名付けられ方で決まってしまいます。

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更に昭和に入り、東京オリンピックの開催をきっかけに施行された新しい住所表示が実施されると、昭和50(1975)年に戸塚町、諏訪町そして下落合の一部が合併して新しく『高田馬場』という地名が採用されました。

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こうして高田馬場1~4丁目が誕生します。

現在すっかり定着している『高田馬場』という地名は意外にも最近誕生していたのでした。

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現在、穴八幡宮と『高田馬場』跡に程近い水稲荷神社で毎年体育の日に流鏑馬神事が行われています。

かつての馬場に思いを馳せてこの秋の流鏑馬の時期にでも訪れてみては如何でしょうか?

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高田馬場跡

住所:〒162-0051 東京都新宿区西早稲田3丁目付近
交通:東京メトロ東西線「早稲田駅」下車徒歩3分
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穴八幡宮

住所:〒162-0051 東京都新宿区西早稲田2-1-11
電話:03-3203-7212
受付:AM09:00~PM05:00
交通:東京メトロ東西線「早稲田駅」下車徒歩3分
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【参考文献】
『この一冊で江戸と東京の地理がわかる!』正井泰夫(株式会社青春出版社)
『東京を江戸の古地図で歩く本』ロム・インターナショナル(河出書房新社)
『世界で一番気になる地図帳』おもしろ地理学会(株式会社青春出版)

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